民藝100年を振り返り、佐伯祐三の絵と再会。そんな11月のアートな話。

民藝100年を振り返り、佐伯祐三の絵と再会。そんな11月のアートな話。

11月は母親が訪ねてきてくれたこともあり、東京で開催されている2つの大きな展覧会(末尾記載)に行くことができました。

どちらも見応えたっぷりで、本当に楽しかった。

久しぶりにアートとじっくり向き合って、たくさんのことを感じたんだけど、その中でも次の5つのキーワード

  • 日常
  • 編集
  • 模倣
  • アートとの対峙

が自分の中に濃く残ったので、それらについてちょっと書いてみようと思います。

旅とアートの切っても切れない絆。

民藝運動家にしても、印象派の画家たちにしても、旅のなかで美しいものに出合い、さらに美しいものや風景を求めてまた旅に出る。

芸術家のインスピレーションの多くが旅のなかで生まれるということを、あらためて痛感した。

旅って「楽しいけど非日常で、お金がかかるから現実的にはそう頻繁に行けるものではない」ところあるんだけど。

いやいや。

いやいやいやいや。

一度きりの人生、そんな風に諦めてやり過ごすにはもったいない。

なんて思い直しました。

天才モーツァルトも、ひたすら旅をしながら曲を作ったんだよね。

旅をしていたから、あんなにたくさんの曲を生み出せたのだよね。

旅って、アートや芸術に欠かせないもの。

旅はおおいに感性を刺激してくれるもの。

今回あらためて、自分の心を豊かに保つためにも、旅をよりいっそう大切にしていきたいなと思った所存。

ここのところ、社会情勢もあいまって「今は旅は無理だから考えるのはやめよう」って思うと同時に、感受性や可能性も完全シャットアウトしちゃってたところあったんだが。

せめて頭のなかでは少しずつイメージを膨らませていくようにしようと思う。

日常の中でも工夫すればもっと旅を感じることもできるし、いつか行く日のために予習することだってできるわけで。

それから、本や動画を活用すれば疑似体験だってたくさんできる。

無理はできないけど、待ってばかりもいられないから、地に足つけつつも視点を未来に移していきたいなって、あらためて思わされた。

旅から得られる感動やインスピレーションは、人生になくてはならないスパイス。

そんなことを強く感じさせてもらった今回のアート巡りでした。

日常から生まれる感性

旅が大事と言ったそばから対極にあるもの出してきちゃったけど。笑

「自らの作品のほとんどを、生まれ育った街の中で撮影した」という写真家のソールライターが

神秘的なことは、馴染み深い場所で起こる。なにも、世界の裏側まで行く必要はないのだ。

と言ったように、何気ない日常にこそ美しいものがあるということもまた事実で。

民藝にしても印象派にしても、そういう日常の素晴らしさに着目した活動であり芸術だったわけです。

旅のような強いエネルギーの刺激は、自分の心に大きな変化をもたらしてくれるけど、だからといって日常や「生きること」を疎かにしてはいけない。

日常で育む小さな幸福感の積み重ねは、必ず大きなことを成し遂げるときの糧になってくれる。

そんなことも感じさせられたなぁ。

一見、相反するものに感じる2つのことだけど、ポイントは「どっちを求める自分も否定しない」ことかなと思っていて。

旅の刺激のなかでは色んな新しいアイデアやインスピレーションがあるけど、日常に戻るとまたそれを全て実現するエネルギーがなかなか持てなかったりする。

それでも、どっちの自分も嘘じゃないし、どんなときの自分も本気なんだから、本当に大切なことは必ず自分に訪れるし、実行できると信じてあげる。

そんな心がけの中で、どちらを愛する自分も認めてあげられるといいなと思ったりしてます。

やっぱり、どうやら編集が大事。

はい来ましたよ。これ。

先日「編集思考」に注目しているということを書いたんですが。

GarageBandと編集と時間管理。

ここでもまたきました。編集のすごさ。

展覧会をどう見せるか?というキュレーターの仕事も編集に通ずるものはたくさんあると思います。

で、そのうえ民藝運動の発足人、柳宗悦氏。

そうは言いつつ、編集ってなんですか?ってことは、未だにパリッと言葉で説明できないんだけど。

「どう見せるか?」ということが大きなポイントであることは、分かってきました。

柳氏のことでも、
・民藝にかかわる冊子の表紙を民藝品の布にする
・民藝品を紹介するときに、その模様だけにフォーカスした写真を掲載

など、見せ方にめちゃくちゃこだわっている。

素晴らしいもの、おもしろいものがそこにあるというのは大前提なんだけど、それをどう見せるかも大切なんだよね。

編集者出身であるジブリ鈴木敏夫さんが制作について語っているジブリの三原則というのがあって

1.おもしろいものを創る
2.言いたいことも少しは言う
3.ちゃんとお金も稼ぐ(視聴者にちゃんと伝える)

で、重要なのはこのあとで、

どれも大切だけど、この順番で考えないとおかしくなる。

ってことを仰ってるのね。

つまり、おもしろい作品、素晴らしい作品がまずあって、そのあとで初めてそれをどう見せたらたくさんの人に(またはねらった人々に、上手に)伝えられるか?という「編集」にあたる部分を組み立てる。この順番が大切だと。

柳氏の場合も、まずは民藝品という素晴らしい芸術があり、そこへの深い情熱があって。

そのあと初めて、それをどう見せるか?ということなんだが、その世界観を非常に精巧に作り上げていて。

上に挙げたような冊子のデザインや写真の選び方のほか、出かける時に民藝品の服を着たりしたことも、周囲に対して揺るぎない意志を伝えられる素晴らしい演出だよね。

そんな柳氏の細部にわたるこだわりがなかったら、もしかしたら民藝運動はこんなに広がることはなかったかもしれないなと思いました。

そして、民藝それ自体だけでなく、そんな柳氏の功績をきっちりまとめて教えてくださった「民藝の100年」展のすばらしさ。

民藝運動というものが、ただの民藝品コレクションではなく、思想であり生き方であったということを、深く知りました。

模倣の重要性

すぐれたものを真似することから、すべての創作ははじまると言ってもかごんではない。

それは本当に心からそう思います。

またジブリになっちゃうけど天才宮崎駿監督だって「自分の作品は優れた先人からインプットしたことのアウトプットにすぎない」というようなことを仰っていたし。

歴史的な名著といわれる「アイデアのつくり方」にも、アイデアとはそもそも組み合わせだ。と書いてあります。

アイデアのつくり方 ジェームズ・ウェッブ・ヤング/今井茂雄 CCCメディアハウス 2012年06月

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先人の偉業をいかにうまく自分のなかに取り込んで、組み合わせて吐き出すか。もう何事もそれしかないとすら思います。

それとね。こんかいあらたに痛感したのは。

やり切ることの大切さ。

アーティゾン美術館でみた森村泰昌さんの現代アート作品は、過去の名作(自分が尊敬する人)のオマージュシリーズで。

ゼロからイチを作り出すのでなく、イチを10にすることを最初からアートとしたその作品は、、、

全部を理解できたとは思わないんだけど。笑

それでも、実際に作品のなかでその人らしさというのがちゃんと表現できていることはハッキリわかって、だからこれはその人の作品として成立しているんだろうな。と理解できた。

(少なくもそのオリジナルの人の作品をパクった!とは言えない。あくまで発想をお借りしただけ)

好きなアーティストの真似したりオマージュするのって、今のご時世とくに勇気がいるんだけど。(すぐに出典をリサーチして揚げ足とる人たちがいるから)

けど、それをきっちり自分で料理しなおしてやり切っているのなら、堂々と自分の作品として語ればいいのだよね。

そんなことをあらためて教えてもらった出合いでした。

アートと対峙すること。

コロナウィルスの感染が世界中に拡大してから、近現代アートというものが妙にしっくりくるようになった。

「説明のつかない表現」が妙にストンと腹落ちするようになってきて。

以前いった箱根のポーラ美術館の「シュルレアリスム」もそうだし、今回出合ったカンディンスキーなんかもそう。

これには2つの理由があると思っていて、ひとつは自分がそれなりにアートを見てきたということ。

単純な表現を簡単に理解できるようになったから、簡単には解釈できないような分かりづらいものに心地よさを覚えるようになった。

(これは音楽を長くやってきて、だんだんジャズに傾倒していくこととも、なんか似てる気がする!)

で、もう一つはこの社会情勢だよね。

世の中が急激に不安定さを増して、それまでの価値観ではにわかに理解できないようなことが現実として起こり続けている。

つまり現実のほうが、その抽象的で理解しがたい世界観に近づいたことで、逆にそういう作品が腑に落ちるようになった。

とにかくね。今回のこの期間を経て、個人的には近現代アートとの距離が確実に近づいたように思う。

まぁ、また新しく理解しがたいものが生まれてくるだろうから、永遠のいたちごっこかもしれないけど。

だからこそ、こういう世界に触れ続けることがとても大切だなと思いました。

アートの世界には商業的な要素が少ないから、自分が関わりたい音楽やエンタメの世界より、表現としては先を行ってるなと思えることも多いしね。

これを機に、また努めてちょこちょこアートに会いに行けるようにしたいね。

都心から少し離れたところに引っ越したうえでリモートワークということもあり、なかなか行くのが億劫だったりするのだけどねぇ。

それでも久しぶりに行ったら、やっぱり展覧会って、どんなものでも絶対に感ずることとか学べることがあって

世の中には「アート思考」や「ビジネスマンとアート」について語られている本もたくさんある。

「自分だけの答え」が見つかる 13歳からのアート思考

末永 幸歩 ダイヤモンド社 2020年02月21日頃
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ニューヨークのアートディレクターがいま、日本のビジネスリーダーに伝えたいこと

小山田育/渡邊デルーカ瞳 クロスメディア・パブリッシング 2019年04月
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言葉や理屈を超えた表現というのは、たくさんの人の生活や人生を豊かにするものなのではないかな。

まとめ

ということで、私なりにアート巡りを久々にした感想をまとめてみました。

語ったねぇ。笑

とにかく、アートに触れることで感受性はかなり刺激されるということでした。

追記:佐伯祐三の絵との再会。

そうそう。タイトルにもした感動のできごとについて語り忘れました。

大好きな画家さんの一人に、佐伯祐三さんがいるのだけれど。随分前にどこかの展覧会で見てたいそう気に入ったにも関わらず、その後まったくどこでも見かけなくなっていた絵があって。

それがこの「テラスの広告」なんだけど。

佐伯祐三さんの作品を見かけるたびに「あの超ステキなカフェのテラスの絵はどこで見たんだっけなぁ」と思い続けていて。

そしたら、ここにありました。

アーティゾン(旧ブリヂストン美術館)が5年も閉館していたことを考えると、長らく巡り会えなかったことにも合点がいきました。

そして久しぶりに見たこの絵の素晴らしいこと。

ミュージアムショップにクリアファイルがあったので即買いして愛用しています。

見るたびに気分がアガるので、日常がめちゃくちゃ豊かになりました❤︎

あまりに気に入ったのでアーティゾン再訪して追加購入しようかと思ってます。笑

で、寒くなかったら(絶対寒いとは思うけどw)1階のカフェでノマドワークでもしたいなと。

全面ガラスだから、絶対寒いんだけど。笑

上まで吹き抜けてて、とーっても素敵な空間だったので。作業はかどりそう。

最後に今後の気になる展覧会をチェックしておきます。

NEXT:次に行きたい展覧会。

●アーティゾン美術館「はじまりから、いま。1952ー2022 アーティゾン美術館の軌跡」

まずは11月にも行ったアーティゾン美術館は1月から新しい展示になるようです。

印象派を含むコレクション展ということで。今回とかぶるところもありそうですが、見応えはありそうだね。

出展数が多いとどうせ一度ですべてを感じきることはできないし、同じのがあっても全然新鮮に見れちゃうから、行ってもいいかなぁと思います。

丸の内がわにある三菱一号館美術館しかり、東京駅周辺という地域がら、親しみやすい印象派が多いですね。

正直いうと、印象派はもうだいぶ見ているので「知ってる」と思うことも増えてきたのですが、機会があったら覗いてみようと思います。

●国立新美術館「メトロポリタン美術館展」

MET!!!!メット!大好きなニューヨークのメットが来る!ということで要チェック。

これは行かねばなりません。

ニューヨークと名のつくものは全てチェックしておくことにしています。笑

実は2年前、夢のニューヨーク出張で念願かなってメットにたどり着いたのですが、なんと入館から30分で閉館の案内…

広く美しい館内を目をキラキラさせながら移動して、やっと最初のお部屋についた瞬間のこと。

黒い服をきたセキュリティの人が何十人も押し寄せてきて閉館をうながし、逃げるようにメットを後にした。という苦い思い出が。笑

来年のことすら読めない今ですが、ニューヨークに再び訪れるまでにはまだ少しかかりそうだから、その前にメットだけでもリベンジしておくことにします。

(あぁ〜ニューヨークはやく戻りたい!)

ということで。

今日のところはこんなもんで。

INFO:今回行った展覧会

一つめは国立近代美術館(MOMAT)で行われている民藝100年の歴史を振りかえる大展覧会。

●柳宗悦没後60年記念展 民藝の100年(国立近代美術館MOMAT)

そしてもう一つは、2020年1月にリニューアルオープンしたアーティゾン美術館の3本立ての特別展。

●石橋財団コレクション選 「印象派ー画家たちの友情物語」(アーティゾン美術館)

約5年ぶりにリニューアルオープンしたアーティゾン美術展の所蔵品を中心に、印象派の画家たちとその相関性について紹介されたメインの展示に現代アート展とフランスの挿絵展を合わせた3つの合同展覧会。

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