ジブリ本。自分を捨てる仕事術 by 石井朋彦

ジブリ本。自分を捨てる仕事術 by 石井朋彦

ジブリ鈴木敏夫さんのもとで働いてらっしゃった、プロデューサー石井朋彦さんの仕事術の本。

 

ここでいう「自分を捨てる」とは「自分を押し殺して人の言いいなりになる」ということではありません。

とことんまでに、まず他者を真似ていくことで、他者と自分の差分を発見する。これ宮崎さんも同じようなこと言っていたな。基本的なことをマスターして分母が増えることで、人との違いという分子も際立っていくのだと。

または、とことんまでに、他者を観察することで、ものごとの本質を見きわめていく。

あるいは、とことんまでに他者の想いや意図を尊重することで、ウィンウィンの関係を築いていく。

というようなことです。

けっこうネタバレだったLINE LIVE…

読んでまず思ったのが、先日のラインライブでけっこう話しちゃってるではないか!笑

LINE LIVE 『スタジオジブリの仕事術』鈴木敏夫×石井朋彦(Chic Life)

そういうところが、「もう言っちゃいますけどね」と何でも暴露しちゃう鈴木さんと酷似。

それでも当然、トークショーで話してないエピソードや仕事術もたくさん書かれていました。

そして、一つ一つに対して、鈴木さんからどんなときにどんな風に教えられてきたのか?

今、石井さんがどんな風にそれを自分のものにし、どうやって活かしているのか?

そんなことが、分かりやすい言葉で綴られています。

久しぶりに新たな鈴木敏夫を知った

鈴木さんのエピソードって何回聞いても(読んでも)楽しいですし、トークショーで既出の話題はたしかに多いのですが苦笑、当然、本のほうが詳細に語られています。

人を肩書きで判断しろ

個人的には、「人を肩書きで判断しろ」というのが好きでした。

好き嫌いで判断すると基準が歪んでしまう、ということなんですが。

どういう肩書きで、どんな力を持っているのかを冷静に見極める必要があるというのは、本当にごもっともだなと。

こういうことは、ビジネスの場においてはとても重要ですよね。

色彩担当 安田道世さんの「仕事は公私混同」

「仕事は公私混同」というのは、鈴木さんが「ジブリの哲学」はじめ色んな本の中でいつも話してくれていることなのですが。

これ関連で新しく知ったのは、先日、宮崎さんのドキュメンタリーの記事に書いた亡くなった色彩担当の保田道世さんの発言。

 

出社して、パソコンに向かってから色を考え始めるんじゃダメなのよ。朝起きて、会社に行くまでのあいだに、その日塗る色は全部決めておくの。

だってパソコンの画面見てても、机のまわりに色はないでしょ?

家から会社のあいだに、参考になるものはいっぱいあるじゃない。席についたら、考えていた色を塗る。

そうすれば仕事なんてすぐ終わるのよ。

 

あぁ〜カッコいい!

仕事のヒントというのは日常に落ちてるんですよね。デスクにはない。

「仕事する=思考し、何かを生み出す」ことで、それを形にする「作業」は、仕事ではありません。

ザックリ言うなら、机に向かっている時間は、作業の時間なわけです。

作業をしながら試行錯誤をしてあれこれ考えるのは、もちろん仕事のうちではありますが。

そこにいる「だけ」では、ゼッタイに仕事は生まれない。

それが石井さん、そして鈴木さんや保田さんがおっしゃる「公私混同」の仕事。

頭では分かっていても、結局、作業時間の長さで仕事への従事度、および充実度を測ってしまうことは、今の社会では(とくに日本では)まだまだ多いと思うのです。

私も、とにかくまずパソコンに向かうことで、答えを探そうとするときがあります。

辛い辛いと言いながら、自分をデスクに追い込むことで「頑張ってる」と思いこもうとする。

たしかにそんなときが、あった気がしました。

気をつけてはいるものの、身の引き締まる思いでした。

若かりしころの石井さん自身が読者目線

読み進めていくと、若いころの石井さんのように鈴木さんの考え方ややり方に、疑問を持つことがあるかもしれません。

でも若き日の石井さんの「そんなこと本当に意味があるのか」という疑問が、そういった読者目線の疑念とちょうど重なるようになっています。

そして、そのうえで、その疑問に対する答えを教えてくれるのである意味、対話形式みたいになっていて、とてもスムーズに読み進められます。

やっぱりすごい鈴木敏夫

個人的には、けっきょく、鈴木敏夫さんのことが、もっともっと大好きになりました。ハート。笑

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「鈴木敏夫が語るジブリ」はもう知り尽くしている私。

もう新しい話を聞くことは、そうそうないだろうと自負していたのですが。

この本には、おそらく本人からは、この先も語られることがないであろう「鈴木敏夫の仕事ぶり」が少々、語られていました。(それでも少々だったんだけど)

正直な感想。

鈴木さんも、ちゃんと仕事してたんだな・・・笑

何が言いたいかと申しますと、これは決して「鈴木さんって仕事してないと思っていた」ということでなく。

いかに鈴木さん自身が自分のことを語ってきて「いない」か。

この本に書かれていることを誰より鈴木さんがしっかり実践している、そんな証拠でもあると思います。

それもまた、自分を信用せず人を信用した、「自分を捨てる」仕事術、ということなのでしょうね。

 

『スタジオジブリの仕事術』 鈴木敏夫×石井朋彦 初の師弟対談