自分が敬愛してやまない5人のソウル・R&Bレジェンドがいるんですね。
それはもうゼッタイに不動のベスト5で。
今日はその5人のレジェンドをご紹介したいと思います。
順位はないので年代順に。
Ray Charles レイ・チャールズ
レイ・チャールズは、ソウル・ミュージックの生みの親です。
レイがそう名づけたわけではないけれど、歴史上、彼がやった音楽がソウル・ミュージックの始まりと言われています。
レイ・チャールズという人生
とにかくレイ・チャールズという人間の生きザマが素晴らしい。
大好きなナット・キング・コールになりたくて、ひたすらラジオを聴きながらピアノを練習した。
そんなピアノと音楽が大好きな少年が、そのまま好きなことをやりながら大人になった。
そしたらいつのまにか歴史を切りひらいちゃった。
そんなレイのしなやかさが本当にたまらない。
彼の人生は、いつもただ魂のおもむくままそこにあって。
目が見えないハンデはあったけど、それで何ができない、やらないという選択肢はまったくなくて。
いつも「できる」と信じて、自分なりのやり方でコツコツと前に進んでいく。
ジャンルや周囲のビジネス志向にとらわれることなく、いつも彼らしく伸びやかに音楽を愛し、人々を幸せにした。
きっとそういう彼だから、教会音楽とブルースという、当時は相容れなかった2つの音楽を融合するにいたった。
それはただ「自分の好きなふたつの音楽を合体させたらもっと楽しいかも!」という、シンプルながら大きな大きな音楽愛だった。
だからこそ世の中のしきたりや社会のしがらみをかるく跳び越えてあたらしい音楽のカタチを生み出せたのだと思う。
レイのそういう軽やかさが、私はたまらなく好きなのです。
ハンデも、差別も・・・さっそうと駆けぬけたレイのすごさ
じつのところ、レイの人生はかなり波乱万丈。
目が見えないことで人に利用されたり、黒人として差別をうけたりするのはあたり前。
そういうことに対してつねに警戒しなければならなかった。
それから薬におぼれて逮捕されたり、女性が大好きなことでトラブルがあったり。
そういった事件もいろいろとあったわけで。(詳しくは自伝本および映画「レイ」参照のこと)
それでもなんだか、不思議としなやかなのですよね。
きっとレイの持っている天性の人間性なのだと思いますが。
あまり豪遊したりせず、朴訥と好きな音楽やって生きぬいたようなところもあって。
どうにもこうにも、この時代にこんなバランスで生きた人ってやっぱり他にいなくて。
彼がソウル・ミュージックをつくったことにも納得がいく感じがします。
とにかく、この人なくしてはソウルもR&Bも語れない。
音楽的に何がスゴイとか、どの曲が好きだとか、そういう理屈なんていらない。
とにかく彼の声を聞くと、ゾワゾワと鳥肌がたって胸がキューンとして、幸せいっぱいになる。
そして、あぁこれがソウルなんだってわかる。
彼はソウル・ミュージックそのもの。
ソウル・ミュージックはいつも自由で楽しく、セクシーな魂の叫びであるべきなんだと思わせてくれる、最高の人。
Donny Hathaway ダニー・ハサウェイ
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ダニー・ハサウェイは、レイより少しあとの70年代にソウル・ミュージックをさらに発展させていった人の一人。
切なさと、儚さと、ダニー・ハサウェイ
ダニーの何よりの魅力は、その「声」。
とても太くて力強いと同時にあたたかくて包み込まれるように優しいのに、そこはかとなく儚くて繊細。
胸をしめつけられるような「切なさ」がある。
その「切なさ」の裏にあるのは、ダニーが抱えていた苦悩。
彼が生きた時代の黒人の悲運や、人生にたいする繊細な心もよう。
それが原因でみずからこの世を去ってしまうことは残念でならない。
だけどそういったものがあったからこそ、こんなに素晴らしい音楽が生まれたことも事実。
なんて皮肉なことなのだろうか。
世界でもっとも素晴らしく、切ない音楽。それがダニー・ハサウェイ。
ダニーの作った、新しいソウル
この世にいない人の音楽を、こんなに時間をかけて深く深く聴きこんだのは、ダニーが初めてでした。
とにかく毎日毎晩、彼の音楽にひたすら没頭し、その切なさに浸りこんだ。
そんな日々は、いまでも私の宝物です。
ダニーから受けた音楽的な影響はとても大きい。
「いつも全体のトータル感を大切に※」というダニーの曲づくりやアレンジにたいする考えかた。
その考えにもとづいて作られた完璧なバランスの曲やアレンジは、ソウル・ミュージックの教科書的な存在。
※ダニーのインタビューより要約
心の病をのりこえることができず、わずか33歳でみずから命をたち、この世を去ってしまったソウル・レジェンド。
もはや歴史上の人物であるダニー・ハサウェイについて、あまり知らない人も多いかもしれません。
それでも、きっとほとんどの人が彼の曲を聴いたことがあると思います。
ダニー・ハサウェイを日本でいっそう広めていくことは、私の人生ミッションのひとつ。
Stevie Wonder スティーヴィー・ワンダー
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スティーヴィーは当時まだまだ黒人だけのものだったソウル・ミュージックを、その魅力そのままに世界中で愛されるものに昇華させた人。
ダニーと同じ70年代にゴリゴリと新しいソウルの歴史をつくっていった人の一人です。
もはや説明不要の、まさに生きるレジェンド。
ソウルレジェンドって若くして亡くなっている人が多いので、こうやっておなじ時代を生きているだけでもほんとうに幸せ。
神の申し子、スティーヴィー・ワンダー
時代を超え、国境を超え、今でも多くの人に愛されるスティーヴィーの音楽。
とてつもなく天才的でハッピーなのに、じっさいめちゃくちゃ奥深い。
ソウルとかR&Bとかそういう垣根なんてすっかり越えて、彼にしかできない音をつむぎつづける。
それがレジェンド、スティーヴィー・ワンダーなのであります。
スティーヴィーの魅力は、そのポップな大衆性だけではない。
どれだけ熟知したと思っても、また次に聴いたとき新しい魅力を発見してしまうほどの奥深さがある。
いつもニコニコ、おしゃべりをしていてもいつの間にか歌ってて。
どんなときも人をハッピーにしちゃうチャーミングな人。
ですがね。
やっぱり若いころにはたくさん差別を受けてきているし、不条理な社会にたいして少なくない嘆きを抱えているのですよね。
彼の音楽は、いつも愛であり平和であると同時に、そうでない社会に対する「怒り」や「絶望」だったりする。
だからどんなに明るい曲も、人の心の深いところまで、ちゃんと届くのです。
すべての垣根を越えた、スティーヴィーの音楽
これだけ世界中で愛されているスティーヴィーの音楽は、ソウルやR&Bにとどまらず、まさに現代のポップスすべてのお手本といえる存在。
この人がいなければ、ソウル・ミュージックが日本でここまで愛されることはなかったかもしれない。
そしたら日本のソウルレジェンド・久保田利伸もディーバ・MISIAも生まれなかったかもしれないし、私たちが日本でソウルやR&Bを表現することも、なかったかもしれない。
だからスティーヴィー・ワンダーはもうその存在自体が、感謝のカタマリなのです。
本当にありがとうと心からいいたい。
そしてまだまだ長生きして欲しい。120歳ぐらいまで。笑
Michael Jackson マイケル・ジャクソン
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またして説明不要の、唯一無二のキング・オブ・ポップ、マイケル・ジャクソン。
黒人シンガーとして、スティーヴィーよりさらに広範囲にわたりジャンルを越えて音楽をつむいだ人。
そして音楽と映像を融合したエンターテイメントの形を作り出した人。
ミュージック・ビデオにをつかって曲にストーリー与えるという映像で音楽を売る手法やバックダンサーを従えた群舞を、はじめてやった人。
今となってはだいぶマシにはなったけど、ここでもう一回ハッキリさせておきたい。
マイケルはヘンな人ではない。(ヘンなところはある)
ものすごい才能とゆるぎない実績をもったレジェンドなのだ。
すべてがシビアな、ミスターパーフェクト
マイケルの魅力は、その神がかり的なリズム感と、エンターテイメントへのこだわり。
ステップを踏む、指を鳴らす、腕を上げる、下ろす、上を向く、横を見る、ハットのズレを直す、手を振る、指を動かす、、、etc。
ステージに立っている間じゅう1秒もやすむことなく素晴らしいリズムを刻みつづけ、どんな瞬間もエンターテイメントとして「魅せ」つづける。
ザッツ・エンターテナー、マイケル・ジャクソン。
その文字どおりブレないたたずまいが、とにかくカッコよくてカッコよくてカッコいい。
ハマったころの夢中ぶりと言ったら・・・ちょっと言えません。完全に中毒でした。ほぼ寝てなかった。
中毒性が高いことだけがマイケルの注意点。笑
音楽でほんとうに世界をかえたオトコ
マイケルは、どんなことにも、どんな所にも、ボーダーラインを引きません。
じつはそういう精神こそが、私がマイケルのもっとも尊敬するところかもしれません。
だからこそ、彼はたくさん歴史をぬり変えられたのだと思います。
子供も大人も、女性も男性も、黒人も白人も、みな同じ人間だと訴え、世界の愛と平和を誰よりも望んだ人。
そして、どんな音楽もパフォーマンスも「素晴らしいエンターテイメント」として垣根なく愛した。
ジャズもロックもポップスもソウルも、すべてすべて、マイケル・ジャクソンというひとつのボックスの中にとりこんで消化してモノにしてしまった。
そんな才能が KING OF POP の称号を得るにいたった。
多くのアーティストとのコラボレーションが成立したり、We Are The Worldみたいなことが実現できてしまったのも、彼がそういう大きな愛の中に存在した唯一無二の存在だったからでしょう。
正当に評価されるべき天才、マイケル・ジャクソン
幸か不幸か、マイケルが亡くなったことで、私はマイケル中毒から距離を置くことになりました。
でもマイケルへの愛と尊敬は、今でも心のずっと深いところで健在です。
マイケルに恋しなければ「私はR&Bシンガーです」なんて一生言えなかった。
きっと生涯「R&Bシンガーになりたい人」どまりで、出口の見えない迷路をさまよいつづけたに違いない。
逆に言えば、現代R&Bシーンに存在しようとするかぎり、絶対に無視できないのがマイケル。
そんなマイケルに亡くなるまえに出会って深く没頭し、自分の細胞にマイケル・エレメントを深く刻みこめたことを、とても誇りに思います。
語りだしたら止まらない、マイケル愛。
この続きはいつか・・・マイケルのカバーライブでもすることがあったら、お話したいと思います。笑
D’Angelo ディアンジェロ
最後に書いてるからって、5番目って思わないでほしいという切実な願い。
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90年代に活躍したディアンジェロは、私のベスト5の中で唯一の「ポストヒップホップ」世代。
彼は、ソウル・ミュージックに大旋風をもたらした、もっとも新しい人で、もしかして最後の人かもしれない。
中毒性というより毒性すらある
エンターテイメント性で虜になったのがマイケルなら、その奏でる「音」の虜になったのがディアンジェロ。
彼は何よりその音楽性が突出して評価されている人。
それゆえ特に日本では一般にはあまり知られてないけど、業界ではかなり有名という特別な人。
日本だと、久保田利伸さん、清水翔太くん、そして人気急上昇なSachimosや星野源さん、ハマ・オカモトさんなど、ディアンジェロの虜になってるミュージシャンは数知れず。
最近アルバムを出してくれて、すこ〜しだけ日本でも知名度があがった気がしてる。気持ち。
彼の音はどれも新しいのにスタンダードで、すごく懐かしいのに、とても鋭い。
果てしないブラック・ミュージックへの愛と革新的な感性が、どこまでも深い深い世界にいざなってくれる。
ドラムにもベースにもギターにもなる、それがD’Angeloのピアノ
ディアンジェロがとてつもなくカッコいいのは、じつはピアノ一本で何でもできちゃうところ。
ヒップホップ世代のブラック・ミュージックってベースが電子サウンドだしループ音源だし、それを生楽器であるピアノだけで表現することは、とても難しい。
彼はそれを、いとも簡単にやってのけちゃった。
なんなの。凄すぎるでしょ。カッコよすぎるでしょ!
もちろん、それをさらに生バンドでやってのけたという凄さが、ニュークラシックソウルという新しいジャンルを確立するに至ったわけですが。
※ちなみに本人たちはジャンルに括られるのを嫌うし、実際に垣根はないのですが
それでも90年代2枚のアルバムデモはほとんどピアノベースだろうし、やっぱり彼の幅広いピアノ表現こそが、その音楽性のスゴさのベースだと思うのです。
だから、彼のピアノ弾き語りを聴くたびキュンキュンしてしまうわけ。そう、キュンキュン。
これとても適切な言葉。音楽の恋わずらい。
その音やリズムはとても刺激的で、知れば知るほどドキドキハラハラ、鳥肌モノです。もうカッコよくてカッコよくてカッコよくて、おかしくなってしまいそう。
だけど止まらない!という永遠ループ。笑
突然の再開、そして再会
2枚のアルバムを出してから10年以上活動休止していましたが、2013年ごろから活動を再開。
もはや歴史上の人になりつつあった恋わずらいの相手が戻ってきてくれて、どれだけ嬉しかったことか。
以前よりファンキーになった彼の音楽は、それでも底抜けにカッコよくて渋い魅力にあふれていて、やっぱり毒性あり。
過去の栄光をあっさり捨てて新しい音楽にチャレンジしていく姿も、私のお手本のひとつです。
私が大好きだったピアノ弾き語りはほぼ封印され苦笑、5年ぐらい山小屋(?)に引きこもって練習しまくったというギターは、けっきょく死ぬほどカッコいい。
これからもまだまだ、目が離せない、最後にして最愛の、私の神。
しかし。
D(ディアンジェロの愛称)もまた、人生が波乱万丈でして。
もちろん薬にも溺れましたし、逮捕されたり、事故で瀕死になったり、突然ライブキャンセルしたり・・・
レイの人生に通じるものがあって、ソウルレジェンドらしいとは言えるのですが。
少しでも同じ時代を生きたい私としては、くれぐれも身体に気をつけて長生きしてほしい、というのが、今彼に伝えたい唯一の願いだったりします。
最近はニューアルバム制作や新曲の噂なんかもあって、次作が気になるところではあるけど。
まずはとにかくムリせず生きるんだよと言いたい。笑
まとめ
ちょっと長くなってしまったけれど。
やっぱり、、、音楽の素晴らしさは音楽で伝えるのが一番だなぁと思いつつも。
この素晴らしい5人について、へぇー、そんな人たちなんだ、え、あの人ってそんなすごかったんだ。
そんな風に興味を深めてくれたら嬉しいなと思います。
そして彼らの音楽を聴いて、ハッピーになる人、あるいは、私のように恋に落ちる人。
そんな人たちが少しでも増えれば、私も幸せだなって思います。
そんなことで、敬愛するベスト5レジェンドでした。