タイポグラフィ。

タイポグラフィ。

何年か前から少しずつ興味が大きくなっている分野にタイポグラフィというものがある。

タイポグラフィとは何か。

そう聞かれて端的に答えられる自信はない。

文字デザインに関すること。文字フォントや文字を組み合わせたデザインのこと。

というぐらいで勘弁してほしい。

なにせ一番はこの言葉の響きが好きなだけなのだ。

 

どんなフォントを選ぶか。

それがタイポグラフィの本質だと私は思っている。

私はずっとフォント選びが好きだった。

紙の発行物を制作したときはモチロンだが、エクセルやワードやパワーポイントを使うときでも、フォント選びを楽しんでいた。

どんなにしょうもないビジネス文書でも内部資料でも、ある程度はこだわった。

デザインを整えるということは、相手に心地よくドキュメントや資料を読んでもらうための思いやり。

そんな風に思っているところがある。

 

Windowsを使っていたころはメイリオがお気に入りだった。(多くの人がそうであるように)

本当はもう少しスリムなものが好みだがOfficeで選べる日本語フォントの中ではダントツ目に気持ちいいフォントだった。

その後に出会ってもっと気に入ったのが小塚フォント。

パソコンではレイアウトに影響が出るためあまり多用しなかったが大好きだった。

 

小塚ゴシックは、小気味いい。

整っていて無難に見えるのに、なんだかちょっとクセがある。

気になるほどに目立つクセではない。

ちょっと違うけど、そんなに違わない。

そんなバランスが、小気味いい。

無機質になりがちなビジネス文書や資料に、温かみを与えてくれる気がしていた。

 

あとで知ったが小塚フォントはOfficeやMacにデフォルトで入っているものではない。

AdobeのIllustratorを使ったときに手に入れたものだったらしい。

 

ちなみにこのサイトで採用しているWordPressテーマ LION MEDIAでは游ゴシックが使われている。

これもシンプルで使いやすくオススメだ。

 

フォントの話が長くなったが、タイポグラフィに戻る。

タイポグラフィと出会ったのは活版印刷を知ったときだった。

その活版印刷を知ったのは、あるグリーティングカードを買ったときのこと。

偶然ネットで見つけた素敵なバースデーカードを注文したお店 SAB LETTE RPRESSさん。

あまりに素敵なカードだったため、それがオリジナル商品なのか調べるためプロフィールをチェックした。

するとそれはオリジナルだったうえに「活版印刷」という技術を使ったものだったという運び。

 

活版印刷の魅力はその文字のデザイン性にある(それがタイポグラフィということ)。

さらにその文字盤を押し当てるという製法から、紙に凹凸ができる。この立体感がたまらない。

いつか自分の名刺をつくるときは絶対に活版印刷でオーダーしようと心に固く決めた。

 

そんなことがあってから数年。

文字やフォントへのこだわりをなくすことはなかったが、注目する機会がなくなっていた活版印刷やタイポグラフィ。

「Casa BRUTUS特別編集 美しい暮らしをつくる本」で再会することになる。

 

このCasa BRUTUSの特集は「本」だったから、タイポグラフィは実際関係なかった。

関係あったのはそこに紹介されていた本屋だ。

すぐにでも行ってみたいと思える美しい佇まいをした小さな街の本屋。

それがタイポグラフィやデザイン専門の古本屋BOOK AND SONSだったのだ。(URLは末尾に掲載)

 

東急東横線学芸大学駅から徒歩数分の住宅街にあるこの小さな本屋さん。

タイポグラフィについて学びたいという強い信念があるわけでもなく、デザインを専攻しているわけでもなく。

ただその書店の美しい佇まいがドストライクで、どうしてもその空間を味わいたくなり、さっそく足を運んだ。

 

書店は駅から近いが、住宅街の少し奥まったところにたたずんでいた。

角を曲がったら突然あらわれる異空間。

正面に立ってみて、その考え抜かれた美しさとデザインに関心する。ここだけまるでヨーロッパだった。

ちょうど観光客らしきアジア人カップルとすれ違った。外国のガイドブックでも案内されているのかもしれない。

 

中に入ると手間に本のエリア、奥には小さなギャラリーとベンチのスペースがあった。

こぢんまりとしていたが、とにかく雰囲気のいい空間だった。

 

本のエリアにはフォントやデザインに関する本がアパレルのディスプレイがごとく美しく並んでいた。

オリジナルのTシャツらしきものなども少し置いてある。(写真のドアからうっすら見えている)

静かで整然とした空気に飲み込まれるように、何を手にとるでもなくただ本を眺めていた。

というのはカッコつけただけで、実はデザインに関する本などほとんど読んだことがない。

とてもじゃないが、どれを手にとっていいかさえ分からなかっただけだ。

 

だがウロウロしているうちに得意分野のラインナップを見つけた。

オリジナル文房具。

マスキングテープ、ボールペン、メモ帳。

なんてことない文房具が温かみがあるデザインながらシュッとした印象で気持ちいい。

このお店のデザインコンセプトがわかり、ますます好きになる。

 

オリジナルバッグもあった。

キャンバス生地の黒トートと白ミニショルダー(ポシェット)。

実はこの黒トートには内心かなりのめりこんだ。

かねてからノートPC持ち運びにキャンバストートを利用しているからだ。

大きすぎず小さすぎずの理想の大きさというのがあって、そのバッグは私の理想にぴったりだった。

先月別のものを買ったので今回は断念したが、次のバッグリニューアル時は必ずこれを買おうと思った。

 

さて。

こんな素敵な本屋をわざわざ訪れて、本当に本を一冊も手に取らなかったわけではない。

タイポグラフィ年鑑とか、デザインの基礎とか、和文フォント、とか。

なんとなく分かりそうなものをいくつか手にとっては棚に返した。

 

そんなことを繰り返していくうちに、こんな私でも夢中になれる本を発見できたのだ。

それが雑誌「タイポグラフィ」だ。

シリーズで何冊か置いてありパラパラと目を通した。

特に楽しかったのは「欧文書体を使いこなす」と「和文の本文書体」の2冊だった。

私は思ったよりフォント選びが好きなのだなとあらためて知った。

自分でサイトを持つようになり、実は内心興味が増しているのではないかと思う。

今はフォントをカスタマイズしているわけではないから、あくまで想像。

 

見ていくと、欧文書体については知っているものが多いことに気づいた。

フォント名と書体がパッと浮かぶわけではないが、なんとなく分かるものが多かった。

アルファベットはタイトルなど人の目を引くために使うことが多いからかもしれない。

 

そんな中一番のニュースは、あたらしい和文書体との出会いだった。

筑紫アンティーク明朝というやつだ。(末尾にサンプルURLあり)

レトロで柔らかく、文字そのものにストーリーを感じさせてくれるのがたまらない。

グッドデザイン賞などいくつか受賞歴もあり、かなり有名なようだった。

特に紙媒体の小説などに使われることが多いらしきこの書体。

OfficeやAdobeなどからフォント知識を得ることの多かった私には無縁だったのも納得がいく。

きっとどこかで見たことがあるから惹かれたのだろうけれど。

 

どんなチャンスがいつ訪れるかも分からないが、いつかこの筑紫アンティーク明朝を満を持して何かに使いたい。

そんなことを思いながら、ホクホクとこの店をあとにした。

 

「美しき」もののみ、機能的である。

建築家・丹下健三氏の言葉。

建築においての機能とは「暮らしやすさ」であるが、これは文字についても言えることなのではないか。

 

文字の機能は、情報伝達だ。

だがその「伝わりやすさ」を作るのは文章技工や構成、文字色や大きさだけではない。

見た目の美しさが人の目を動かさせるということが、少なからずあるように思う。

よくライティング技法で取り上げられる漢字とひらがなやカタカナのバランスをとるノウハウ。

これもある意味でタイポグラフィと言えるだろう。

WEBライティングやビジネスライティングにおいても同じことだ。

目に美しいもの。それは「読みやすいもの」なのである。

 

多様化の時代。

これからますますタイポグラフィのニーズは広がっていくであろう。

 

そんなことで、久しぶりにタイポグラフィを思い出させてくれたこの書店訪問。

自分の中にある想像以上の文字へのこだわりを知った楽しい旅だった。

 

今後さらにタイポグラフィや活版印刷を掘り下げていく動きがあれば、特集記事でも紹介したい。

 

以下、参考情報。

タイポグラフィ専門古書店 BOOK AND SONS

お店の公式サイト。本文で紹介した文房具などをふくめオンラインストアでも販売されている。(エプロンもあった)

 

BOOK AND SONS

BOOK AND SONSはタイポグラフィを中心としたグラフィックデザインの本を扱う古書店です。

マガジンハウス ポパイブログ:BOOK AND SONS 川田修さん

お店オープン時のオーナー川田修さんへの取材。

タイポグラフィについて本を紹介しながら分かりやすく解説してくれている。

第26回 BOOK AND SONS 川田修さん

profile:かわた・おさむ|フルサイズイメージ代表。大学卒業後、WEB制作会社に入社。2002年に独立しデザイン事務所「フルサイズイメージ」を設立。2015年に書店「BOOK AND SONS…

活版印刷グッズ販売店 SAB LETTER PRESS

活版印刷の紙グッズを販売しているSAB LETTER PRESSさん。

オンラインストアで売っている凹凸のある美しいグリーティングカードは古紙で作られたものも多く、そのザラザラ感が逆に新しく気持ちいい。

 

sabletterpress

sabletterpress

雑誌 タイポグラフィ

筑紫フォントを作ったフォントワークス藤田重信さんのインタビューが掲載されている。

ちなみに紹介したアンティーク明朝だけでなく、筑紫ゴシックなども非常に使いやすそうでたいへん美しい。

文字サンプルがたくさん出ていて、見ているだけで楽しくなる。

 

筑紫アンティーク明朝

運命の出会いをした筑紫アンティーク明朝の文字サンプル。

筑紫アンティークS明朝 L|書体見本|FONTWORKS | フォントワークス

フォントワークスは筑紫書体やロダンなど日本語書体・フォントの販売、OEM書体・フォントの開発、LETSを提供しています。

雑誌 Casa BRUTUS特別編集 美しい暮らしをつくる本

紹介した書店BOOK AND SONSが掲載されているCasa BRUTUS特別編集。

いくつかは以前の特集からの抜粋もあったが珍しい本の紹介も多く読み応えたっぷりの内容となっている。