みんなも一緒にVoodooの呪いにかかろう。
Voodoo by D'Angelo ヴー・ドゥー by ディアンジェロ
どう説明したらいいのだろう。このゆらぎ。このソウル。この感覚。
簡単に言っちゃえば、ドラムに対して、みぃ〜んな少し遅れてプレイした。ギターやベースも(時と場合によりけりだけど)そしてボーカルとコーラスも。
それによって、大きな大きな、これまでのレイドバックという言葉では表現しきれないほどの、リズムの「すき間」が生まれた。そこにできた、言いようのないゆらぎ。
それがこのアルバムの、唯一無二のグルーヴ。
アルバムが始まった瞬間、喧騒の中の、ドラムのフェードインで徐々に引き込まれていく。そこにホーンが入って、コーラスに包み込まれたころにはもう虜になってる。
そして、この声。飾り気なくまっすぐな声で、リズムをしっかり刻む。そしてただゆっくりゆっくり、音の間に入り込み、グルーヴを生み出してく。
楽曲は、ソウルでもヒップホップでもロックでもファンクでもないようで、そのどれでもあり、きわめて音楽的。
いつも音は最小限。楽器の数もは、キモになるもの以外、余計なもはすべて取り払って、あとはリズムが音楽を奏でていく。
あぁっ!!もう。なんて凄いんだ。
毎秒カッコいいから、聴いてる間じゅう、ずっと悶絶。カッコ良すぎてわりとマジ具合悪くなるレベル笑
それがサイコウのVoodooの呪い。
Untitled (How Does It Feel)
これ再生しようとしたら「一部の方には不適切と思われるかもしれない映像がふくまれています」ってな注意勧告が出た。笑
だそうです。笑
たしかにねぇ。この美しい裸体。はじめて見たときには目玉が飛び出るぐらいフリーズしてガン見してしまいましたけどね。(決して不適切ではない)
奇しくもこのMVによってセックスシンボルになってしまったD様は、コンサートで「脱げ脱げ!」とまるでストリッパー扱いされたことで自由な表現の場を失い、このあと長く音楽活動から離れてしまう。
だけど逆にいえば、それぐらいインパクトのある作品だったということ。
というのは、この映像がすごかったということより、やっぱりこの曲が素晴らしかったのだよね。
ジャンッっと鳴ったあとのたった4つの音。言葉で説明するならそれは「ミーファーソーレー」といういたって単純な4つの音でしかない。
だけどシンプルだからこそ、そのたった4つの音がこれだけカッコよく響くものかと人々を驚かせた。
その後の展開もそう。音はそんなに展開しないし、結局、サビだってイントロの同じ「ミーファーソーレー(How does it feel」なわけで、きわめてシンプル。
これだけの音で、これだけのことができた。空間や余白を埋めるのではなく、空間や余白を存分にとることで、人々の心にある「もっとほしい」という欲をかきたてた。
そして、この曲の持つ世界観を、ディアンジェロがこの身体ひとつで表現してしまったという衝撃。
人々は夢中になってそれを(何を?)追い求めてこのMVを食い入るように見るけれど、曲はカットアウトするようにとつぜん終わってしまう。
そういったすべてをもってして、この曲はあまりに多くのものを動かしてしまった。
ディアンジェロ自身が思っていたよりも、この曲の持つ力というのはすごかったのだと思う。
(ヒットというのは大概そういうものかもしれないけど)
当時のディアンジェロは今にもましてエンターテナーというより純粋に音楽を楽しむ青年だったこともあって、そういった大きな大衆の欲望を抱えきれなかったし、むしろ流しきれなかったのだろうと思う。
それでも今、またカムバックしてくれて、精力的に活動してくれているから、もう私は何も言うことなし。笑
若いときは時代の寵児となり、自分でもよくわからないうちにグイグイと業界を引っ張っていって困惑しながらもただ静かにやりたい音楽を作っていたという感じのDですが。
今は前にもまして自分のやりたいことを誰にも邪魔されずに伸び伸びやってる気がする。
だから、、、はやく次のアルバムお願いします💕
→ディアンジェロ(D'Angelo)がニューアルバム制作中(Chic Life)
前作Brown Sugarのほうが比較的わかりやすい
昔、このアルバムに感動して、かつて私の歌の先生だった人に聴かせたことがあったのね。
その人は、50年代とか60年代のわかりやすいソウルが好きで、それ以外、受けつけないというタイプの人で、その人がこれを聴いて言ったコトバは「さっぱりわかんない」。笑
もっと分かりやすいソウル・ミュージックが好きという人には、このアルバムの良さは、わからないのかもしれない。
だけどこの人は本当にすごいんだっていうことは、どうしても伝えたい。だから、これが分からなかった人はぜひ、前作ブラウン・シュガー(Brown Sugar)を聴いてみてほしい。
Send It On
この曲もじつは(実はってことないけど)本当に名曲だよね。
ディアンジェロの曲はとにかく、少ない音の中でどれだけ気持ちを高揚させつつ、それを最小限に満たしていくかというもの。
この曲も、サビの「Send It On」のハーモニー一択といった感じで、すべてのキモがそこに集約され、他には何もやらない。ただそのフレーズのために他のすべてがイントロ・アウトロとして存在するという感じ。
だけどじつは、そのシンプルさの裏にはめちゃくちゃ深い音楽的な考察とか見解っていうものがあって、とてもとても、とてつもなく繊細にすべてを作り込んでいる。
だからこそ、これだけスキのない音に仕上がるわけだし、だからこそ、サビの「Send It On」はこの曲のすべてを語ってくれるようになっている。